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2012/05/27

11.(証人「渡辺 司の死」)

11(証人「渡辺 司の死」)

2002829日午前630分頃に15分おきに巡回している拘置()所職員により「変死」しているのを発見され、札幌拘置所長による記者会見では、なぜか拘置所によって自殺と断定された。同時に、司法解剖も実施しないと発表されたのである。

喉の奥に靴下を押し込み、さらにもうひとつの靴下を歯ブラシの柄(織川氏の本では歯ブラシと割り箸)で首に巻き込んで、布団の中で仰向けになって意識を失っていた。

これが発見された時の渡辺の最後の姿である。自殺とすれば相当な力と覚悟が必要な死に方である。靴下を喉の奥に突っ込みほとんど窒息状態なのにさらに自分の手で自分の首を締めあげるという大変な死に方である。苦しさを我慢してどこまで締めあげが可能なのか。素人考えでは完遂前確実に気を失って失敗すると思うのだが、専門家はこの死に方をどう判断するのか。

曽我部氏は2人の法医学が専門の医師に取材している。一人には直接会って、二人目の教授には電話で取材している。

証人「渡辺司の死」について内容を原文のまま掲載する。

(一人目の医師の見解)

私の疑問は簡単だった。人間が自分の手で自分の首を絞めて死ぬことができるのか ?ということだった。医師はたまたま法医学教室の空き時間だったと見えて、興奮気味の私の言葉を冷静にメモしながら、やや暫く考えていた。死ねるのか死ねないのか、という点については、死ねる、という答えでしょうね。実際に喉の奥異物を詰め込んで死ぬ自殺はあります。あるというのは一般的だという意味ではなくて、私が検死をした症例の中に一件だけありましたから。だから否定することはできません。本件の場合はハブラシの柄や割り箸など棒状のものを鎖骨下顎骨に引っ掛けるようにしながらうつ伏せになり、自分の体重重しにしたというのであれば、死ねます。

私が言葉を失い、呆然として医師の眼を見ていると、彼は視線を逸らしてこう続けた。

でも、かなり大変な死に方だ。よほどの決意がないとこんな死に方はできない。可能か不可能かという質問に対しては可能。普通の人間ならば無理でしょうね。

喉に異物を押し込んで、さらに靴下を自分の力で巻きつける。五~六分で酸欠になり、脳死状態になります。その後、呼吸が止まり、心停止となる。個人差があるにせよそれまでの時間は十~三〇分。医学的には脳死の段階で死亡したということになるんですが・・・・渡辺の死体がうつ伏せではなく仰向けだったことを私は再度伝えた。

「それはかなりの確率で不可能でしょう」

医師は私が伝えた渡辺の死亡状況に間違いがあるのでは、と言うような懐疑的な顔で私をやや暫く見つめた。

(二人目の教授の見解)

その後私は事務所に着いてから、ある大学病院に在籍する法医学の教授にも電話を入れた。彼は匿名を条件に、私の電話でのインタビューに応じてくれた。同じように私が知りうる限りの「渡辺の変死」についての状況を説明した。電話の向こうで長い沈黙が続いていた。そして法医学の教授は咳払いをしてから話しはじめた。

このようなケースの場合、特定の方からのインタビューにお答えすることは不適切だと思いますが、以前に似たような死体検死したことが一度だけありますので、絶対に私の名前を出さないことをお約束いただくという前提で説明させていただきます。

あなたがおっしゃった『死に方』は可能です。ただし、条件たくさんあります。下顎骨鎖骨に確実に靴下を巻き上げている棒状のものを固定する締め方を、死のうとする本人ができるということ。そして、苦しさの余り体を移動させないことが可能である状態であることです。普通の人ならば脳死状態になる直前で大胸筋と胸鎖乳咄筋が大きく痙攣して、固定していた棒状のものが勢いよく戻ってしまいます

そのようなことが起きると知っている人であれば、そうならない環境を設定することができますが、妙な言い方になりますが、はじめてこのような方法で死のうとする場合は必ず一度は失敗します。拘置所の独房内ということでしたが、一五分毎巡回適切に行われていれば最初の失敗で必ず発見する事ができます。

私が同じケースの死体を検死したことがあると言いましたのは、同じような状態ではありますが、上から本人以外の人間が押さえつけていたから可能だったのです。

死後硬直後に解剖をすると、胸部または背中から圧迫が加えられていたかどうかを生態反応によって確認することができます

 渡辺の死体は司法解剖されないことになっていることを教授に伝えると、電話の向こうでまた沈黙が生まれた。そして教授はそれじゃ、わかりません」と言って、電話は切られてしまった。

稲葉事件のキーマンである渡辺の変死。それは「警察の秘密を知っている者の死でもある。稲葉と組織の犯罪を告発しようとしていた渡辺が、自ら死ぬ理由は見あたらない。彼の目的は逮捕されることによって、刑事裁判という公の場で稲葉と組織を告発することではなかったのか。

ひとつの目的だった稲葉は渡辺の告発により逮捕されたのだから、あとは公判を待つだけではなかったのか。

札幌拘置所によって自殺と断定され、テレビのニュースですでに「渡辺の死」の一報は流れていることだろう。渡辺の死を歓迎しているのは道警だけではないか。渡辺の死によって道警の闇は藪の中へと投げ込まれた。

稲葉はマンションと拘置所と2度自殺を企てたがどちらも未遂で助かっている。渡辺は確実に一回で息のない状態で発見されている。

「恥さらし」のなかで稲葉は服役経験のある渡辺が、刑務所仲間から自殺の方法を聞いて知っていたのではと推測している。

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